かつて、静かな山村に住む普通の少女、美月は、村の外れで不思議な老婆に出会った。老婆は美月の隠れた才能を見抜き、彼女に忍者の道を歩むことを提案する。初めは躊躇していた美月だが、村を襲う盗賊たちに両親を失ったことが決定打となり、訓練を受け入れることにした。
訓練は厳しく、美月は体力の限界まで追い込まれたが、次第にその技術を磨き上げていった。彼女は、忍者としての技術だけでなく、毒薬の知識や暗殺のテクニックも学んだ。訓練の日々の中で、美月は自分がただの村娘ではなく、運命によって選ばれし者であると感じ始めていた。
ある夜、訓練が一段落したところで、その老婆は美月に最初の任務を告げる。それは近隣の村の悪徳商人を暗殺することだった。この任務は、美月にとってただの試練ではなく、自らの手で正義を実現する機会であった。美月は緊張しながらも、その任務のために出発した。
夜陰に紛れ、標的の屋敷に忍び寄る美月。彼女の心は冷静で、目的ははっきりとしていた。屋敷の警備を軽々とかわし、ついには悪徳商人の寝室に忍び込む。美月の手には、師匠から受け継いだ毒が塗られた短刀が握られていた。
その瞬間、美月の心に一抹の迷いが生じる。しかし、彼女は迷いを振り払い、任務を完遂した。血に染まる手を見つめながら、美月は自分が選んだ道を受け入れ、これからの運命を静かに決意した。この夜、美月はただの村娘から、運命に導かれし暗殺者へと変貌を遂げたのであった。
美月がクノイチとしての初任務を遂行する日が来た。彼女のターゲットは、隣村で横暴を極める豪商の男、藤原であった。この男は貧しい村人を虐げ、自らの利益のために何人もの命を軽視していた。美月の師匠は、彼女にこの任務を託し、暗殺を通じて真の正義を行使することを教え込んだ。
夜陰に乗じて、美月は藤原の屋敷に忍び込む。彼女の身体は黒い装束で覆われ、手には毒を塗った苦無が握られていた。屋敷内は複雑な構造で、多くの警備員が巡回しているが、美月の訓練によって得た技術は彼女を確実に目的地へと導いた。
美月は影から影へと移動し、警備の目を掻い潜りながら、藤原の寝室にたどり着く。部屋の中には、豪華な寝具に身を沈める藤原の姿があった。彼女は一瞬の躊躇も見せずに、毒を塗った苦無を藤原の体に投げつける。毒はたちまち彼の体を駆け巡り、苦悶の表情を浮かべる藤原はやがて息絶えた。
任務完了の瞬間、美月は自身の行動に冷静な評価を下す。彼女はこの道を選んだことに対する確信とともに、師匠の言葉を思い返す。「正義は時に冷酷を要する」。美月はこの言葉を胸に刻み、次の任務へと歩を進めた。
この成功は美月に自信を与えたが、同時に彼女の心に新たな疑問を植え付ける。暗殺が本当に正義のためだけに行われているのか、そして自分が選んだ道が本当に正しいのかという疑問である。これらの問いは、美月の心の奥深くに沈殿し、次第に彼女の精神に影を落としていくことになる。
美月の暗殺者としての生活は、彼女を内側からも外側からも変えていった。暗殺の仕事が増えるにつれて、彼女の心は徐々に荒んでいき、以前の無邪気な笑顔は見る影もなくなっていた。そんなある日、美月は久しぶりに故郷の村に戻ることにした。彼女の目的は、かつての恋人、隼人に別れを告げることだった。
隼人は美月の変貌に驚きつつも、彼女の帰還を心から喜んだ。しかし、美月はもう以前の自分に戻ることはできないと知っていた。二人が再会した喜びも束の間、美月は隼人に自分の決断を静かに伝えた。彼女はこれ以上、隼人を自分の危険な世界に巻き込むことはできないと感じていた。
「隼人、私はもう、あの頃の美月ではないの。この手は多くの命を奪って、血に染まってしまった。君には幸せになってほしい。だから、これが最後の別れだ。」
隼人は涙を堪えながらも美月の決意を受け入れた。彼は美月の手を強く握り、「俺はいつでも美月のことを待ってる。もし道を見失ったら、またここへ帰っておいで」と言った。美月はその言葉に心を打たれながらも、二人の未来がもはや交わることはないと悟っていた。
別れ際、隼人は美月に小さなお守りを手渡した。それは二人が子どもの頃に交わした約束の印だった。美月はそれを受け取り、涙を流しながら村を後にした。彼女は新たな任務の地へと向かいながら、隼人との思い出を胸に秘め、孤独な道を歩む決意を固めていた。
この決断は、美月にとって新たな試練の始まりでもあった。恋人との別れは彼女の心に大きな空虚感を残し、その感情が次第に彼女の行動に影響を及ぼすことになる。しかし、美月は自分が選んだ道を進むことを誓い、暗殺者としての孤独な生活を続けていくのだった。
美月の存在が、いつしか組織内で脅威と見なされ始めた。彼女の技能と独立心が、組織の上層部を不安にさせるに至ったのだ。ある日、彼女は組織からの新たな命令を受け取るが、それは自身の同志を暗殺するというものだった。美月はこれを拒否し、組織に背く決意を固める。この決断が彼女の命を狙う追手を生むことになる。
美月はひとまず安全な隠れ家を求めて、山中を彷徨い始める。彼女は組織の追手が常に背後にいることを感じながらも、その訓練と技術を駆使して何度も危機を脱した。途中、かつての師匠から教わった逃避の術を使い、一時的に追手からの視線を逸らすことに成功する。
夜の帳が深まる中、美月は冷静に状況を判断し、次の行動を計画する。彼女は少ない荷物を背負い、身の安全を確保するために、隠密行動を続けた。その間、彼女は自分が信じる正義のために戦い、組織の不正を暴く機会を窺っていた。
追手は彼女の行動パターンを読み解くことに成功し、美月を囲む形で山の中へ迫る。しかし、美月はその地の地形を巧みに利用し、追手を欺く罠を仕掛けた。一連の罠によって追手たちは次々と撤退を余儀なくされ、美月は再び逃亡を続けることができた。
この経験を通じて、美月は自分の内に新たな決意を見出す。彼女は、もはや組織の一員として生きることはないと自覚し、全てを捨てて新たな生を求める覚悟を固めた。孤独な逃亡者としての生活は厳しいものだが、彼女には失うものが何もない。美月は自由を手に入れるため、どんな困難も乗り越えていく覚悟を新たにしていた。
美月の逃亡生活が続く中、彼女は徐々にその力を認められる存在となり、周囲からは恐れられるようになっていった。ある暗黒の集団が彼女の力を利用しようと接近してきた時、美月はこれを好機と捉え、彼女自身がその集団の頭となる道を選ぶ。これが、彼女の「悪堕ち」の最終段階へと進む瞬間だった。
集団の元首として、美月はその才能を悪用し、多くの地域に影響を及ぼし始めた。彼女は自らの権力を強化するために、恐怖と力を駆使して支配地域を広げていった。彼女の下で、集団は以前よりも遥かに強大な勢力へと変貌を遂げる。
この新しい役割で、美月は次第に旧来の倫理観から遠ざかり、力のみが支配する世界に没頭していった。彼女は自らを正義の実行者と称し、その手段を選ばなくなる。その結果、多くの無実の人々が彼女の冷酷な決断によって犠牲になった。
美月の名前は恐怖の象徴として広まり、彼女の過去の同志や友人たちは彼女の変貌に心を痛めた。かつての恋人、隼人も美月の噂を聞き、彼女が一体何者になってしまったのかと絶望的な気持ちにかられた。しかし、彼は美月がいつか元の優しい自分を取り戻すことを信じ、待ち続けることを決めた。
美月は自らの権力を固守し続けるが、その心の奥底では常に孤独と後悔が渦巻いていた。彼女は自分が選んだ道が正しかったのか、それとも何か大切なものを見失ってしまったのかと自問自答を繰り返す。しかし、彼女は既に過去に戻ることはできないという事実と向き合うしかなかった。
彼女の支配下で恐怖が支配する暗黒の時代が続く中、美月は自身の選択とその結果による影響を深く理解し、彼女の物語は悪堕ちの完全なる完成を迎えた。